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令和8年度夏季特別展「発見!れきはくの生きものたち」

【概要】

古来、人は様々な生きものたちと相互に影響を及ぼしながら生きてきました。生きものを食材とし生活・生業資源を得るとともに、家畜化した動物を労働力として利用するなど、多くの恵みを享受してきました。人の暮らしにとって生きものは切っても切り離せない存在です。一方で生きものは、度々人の生活環境や生産活動を脅かす存在となり、共生には困難がつきものでした。そして時に人は生きものを絶滅に追い込みました。

戦後、生きものの保護運動が本格化し、共生・共存を模索する取り組みが現在も続いています。トキの再生プロジェクトはその象徴と言えるでしょう。令和8年5月、トキが本州最後の生息地であった能登に放鳥されました。一度絶滅したトキを人の手により繁殖させ野生に帰す取り組みは、生きものとの共存を目指す私たちにとって、希望の光となっています。

クマ問題に象徴されるように、現在、人の生活環境・行動の変化や気候変動の深刻化に伴って、生きものとの向き合い方が問いなおされています。こうした状況の中、私たちは今一度、人と生きものの歴史を振り返る必要があるのではないでしょうか。本展覧会では、「人と生きもののかかわり合い」をテーマとし、当館が収蔵する様々な分野の資料を、県内外に伝わった関連資料と合わせて紹介します。本展が生きものとの向き合い方の“これから”を考える機会となれば幸いです。

チラシ(PDF:3.7MB) 


【展示内容と主な展示品】

プロローグ ともに生きる困難と希望

歴史博物館において生きもの標本は、人の歴史の証人であり、そして新たな歴史の指針となる。なぜなら、人の歴史は人以外のさまざまな生きものとの結びつきなくしてなりたたないからである。人は生きものを通し自らの歴史を知り、そしてこれからを見つめる必要がある。

【上田市指定天然記念物】ニホンオオカミ(頭骨とうこつ) 長野県上田高等学校蔵

明治12年(1879)に、長野県上田市の東北方にそびえる烏帽子えぼしだけ山麓さんろくで捕獲されたとされるニホンオオカミの頭骨。後頭部は欠落。オオカミは18世紀以降の狂犬病きょうけんびょう拡大の影響により人への凶暴性を強めたことから駆除くじょ対象となり、20世紀初頭に絶滅した。なお、石川県では明治41年までの生息が推定できる。

本州ほんしゅう最後さいごのトキ「能里のり剥製はくせい

戦後、トキは環境変化などの影響で衰滅すいめつの一途をたどった。本州最後の生息地となったのが能登のとである。昭和39年(1964)、最後の1羽となる。昭和45年、佐渡さどでの保護繁殖のため捕獲に成功したが、翌46年に死亡し剥製となった。能里は死亡後につけられた愛称である。当館では14年ぶりの公開。


第1章 生きものがわざわいになるとき

生きものが人に不利益をもたらすとき、私たちはそれを「獣害じゅうがい」「虫害ちゅうがい」などと呼ぶ。例えば江戸時代、農作物と農地を荒らすイノシシやシカ、また稲を食害するイナゴなどの虫が大きな問題となり、人々は駆除に奔走ほんそうした。また、そのイノシシやシカを捕食してくれるオオカミも、ひとたび里に出れば人や牛馬を害する脅威きょういになり得た。生きものの活動や数の増減は、人の生活環境や生産活動に影響を与え、時に大きな災となってふりかかったのである。

鉄砲数等てっぽうすうなど相調理あいちょうり書上かきあげ申帳もうしちょう 安政2年(1855) 当館蔵

羽咋郡はくいぐん富来組とぎぐみ(現在の志賀町)の村々における鉄砲てっぽうの所持状況を調べた記録。江戸時代には、狩人かりうどのほか、百姓についても田畑を荒らす鳥獣ちょうじゅうを追い払うためにおどし鉄砲てっぽうを持つことが許されていた。農作物を害する獣として、イノシシとシカが代表的であった。

ヒナワジュウ 明治時代 当館蔵

旧石川郡尾口村おぐちむら東荒谷ひがしあらたにで採集された火縄銃。白山麓の出作でづくり地では、クマ・ウサギを獲るほか、なぎばた(焼畑)のヒエ・アワを食い荒らすイノシシを追い払うためにも使用した。


第2章 生きものから恵みを得る

人は人以外のありとあらゆる生きものを食材としてきた。対象は動物・魚介類だけで約620種を数えるという。海に囲まれ、白山はくさんを背にし、平野部にせきが点在する石川県では、生態系に応じ、食の恵みを享受する独自の文化を発展させてきた。また、生きものは生活・生業資源としても活用された。例えば、クマからは毛皮のほか、漢方薬として重宝されたたんのうを、カイコから絹糸を、クジラから稲作の害虫除けの油を、イワシから肥料分を得てきた。

御上おかみ差上候さしあげそうろう熊皮絵図くまがわえず 天明5年(1785) 個人蔵

白山麓の天領において取次元とりつぎもとを務めた山岸家が幕府へ献上した熊皮くまがわの絵図。白山麓の閑散期の稼ぎとして、狩猟で得たクマの皮やの取引が行われた。絵図には、槍穴と思われる穴の位置や、猟師から買い求めた際の値段が記されている。

【石川県指定文化財】能登国のとのくに採魚図絵さいぎょずえ 天保9年(1838) 当館蔵

能登の漁業の様子を描いた画帖に見られるように、内浦うちうら宇出津うしつを中心として魚の台網だいあみにクジラがかかることがあった。クジラからは、食用となる肉や皮を得たほか、脂肪からは油が製造され、骨や筋は加工品の原料として用いられた。


第3章 労働力としての生きもの

古くから、人は家畜化かちくかした動物を労働力として利用してきた。とくにウマは、単なる輸送・移動手段としてだけでなく、戦いや農耕の際に用いられるなど、人間の歴史に深く関わってきた。

江戸時代、加賀藩かがはんは優秀なウマを求めて東北地方まで使者を派遣したこともあった。近代になると、ウマは戦争遂行すいこうに欠かせない存在として注目され、政府によって大々的にウマの生産が奨励されるとともに、慰霊いれい顕彰けんしょうの対象ともなった。

乗合のりあい馬車ばしゃ広告こうこく 明治時代(19世紀) 当館蔵

金沢市十間じっけんまちにあった内国通運会社支店の乗合馬車の広告とみられる。明治初期に設立された同社は、政府の保護をうけ内陸輸送請負業を独占し、全国に支店や出張所を設置し郵便物や貨物の輸送にあたった。

ウマのつの 個人蔵

珠洲市すずし馬緤まつなぎの個人宅に伝来したウマの角。聞き取りによれば、みなもとの義経よしつねの時代に能登に逃げてきた武士がいたが、その武士が連れていた7頭のウマのうち1頭にこの角が生えていたのだという。せんじて飲むと腹痛に効くと伝わる。


第4章 生きものを調べる

生きものが目の前にあらわれた時、「知りたい」という思いがわいてくる。どのような名前なのか、どのような生態なのか、仲間はいるのか、食べることはできるのか・・・。江戸時代には、薬用の観点から自然物を研究する「本草学ほんぞうがく」や、そこから派生して各地の有用な産物を考究する「物産学」が隆盛を極めた。加賀藩はこの分野に熱心な藩として知られ、その後援のもと、様々な学術書や博物はくぶつ図譜ずふが制作されていた。

越中えっちゅうのくに魚津うおづうらさかな生写せいしゃ御手おんてかがみ画稿がこう 梅田うめだ九栄きゅうえい(6代) 天明3~4年(1783~84) 個人蔵

天明3年10月から翌2月にかけ、加賀藩御用ごよう絵師えし・六代梅田九栄(1757~1800)は、藩命により越中国魚津に赴き、当地で捕獲された魚・甲殻こうかく類の図譜ずふを制作した。本作はその画稿で、生きものに対する絵師の観察眼が光る。


第5章 信仰世界と生きもの

古来日本では、暮らしの中の祈りの場面にたびたび生きものが登場した。特に仏教ぶっきょうと生きものの関わりは深く、釈迦しゃかの母となる摩耶まや夫人ぶにんは、釈迦を身籠る際に白いゾウが腹に入る夢をみたという(たくたい霊夢れいむ)。生きものは仏教美術の中で、説話中の重要な役割を担う存在として、神仏しんぶつに従える存在として、時には神仏の象徴として、様々に表現されてきた。神仏に生きものを合わせることで、その霊力をいっそう強めようとしたのである。

ぶつ涅槃図ねはんず 佐々木ささき泉玄せんげん筆 江戸時代(19世紀)当館蔵

仏教の開祖である釈迦が亡くなる場面を描いた絵画である。横たわる釈迦のまわりには、弟子たちと同じように嘆き悲しむ様々な生きものたちが描かれている。狩野派かのうはに学んだ加賀藩御用ごよう絵師えしによる動物描写が見どころ。


エピローグ 生きもの再生の時代

生きものの保護運動が本格化するのは戦後からである。その象徴的な存在となったのがトキである。石川県羽咋市はくいし村本むらもと義雄よしおさん(大正14年生)はその保護運動の先頭にたった一人である。しかし、経済成長をめざした戦後日本において、保護運動はすぐに共感を得ることはできなかった。反発・妨害がすさまじく、村本さんは命の危険を感じることもあったという。令和8年、トキが本州最後の生息地であった能登に放鳥された。ケージで生まれ育ったトキが定着できるかどうか、その可否は一重に人の力にかかっている。トキの再生プロジェクトとは私たちの暮らしを生きものの立場から見つめなおす営みなのである。

トキ保護ほご運動うんどうポスター 昭和34年(1959) 当館蔵

本州におけるトキの保護運動は昭和30年(1955)頃から羽咋市在住の村本義雄氏が中心となり始まった。同氏の説得により、県も保護運動に理解をしめし、昭和34年10月に県下に保護を呼びかけるポスターを配布した。当ポスターは唯一の現存品である。



会 期
2026年7月25日(土)~2026年8月30日(日)  
時 間
9:00~17:00(展示室への入室は16:30まで)
夜間開館日
7月25日(土)~8月15日(土)の金曜・土曜は19:00まで開館
(展示室への入室は18:30まで)  
休館日
会期中無休 
会 場
特別展示室  
観覧料

一般800(640)円 大学生・専門学校生640(510)円

  • *高校生以下無料
  • *( )内は20名以上の団体料金 65歳以上の方は団体料金
  • *障害者手帳または「ミライロID」ご提示の方および付添1名は無料
  • *同時開催の「れきはくコレクション」展、常設展もあわせてご覧いただけます
  • *加賀本多博物館は別途、観覧料が必要です
  • *電子チケットもご利用いただけます(日時指定なし)。

※オンラインチケットの発売開始日時は未定です。決まり次第お知らせします。


電子チケットのご案内

料金 一般800円
大学生・専門学校生640円

ご注意

  • *65歳以上の方をはじめとする各種割引料金の適用を受けられる方は、電子チケットをご利用いただけません。ご来館当日窓口にてご購入ください。
  • *日時指定券ではございませんので、入館枠の確保はできません。

 
関連イベント
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ワークショップ「昆虫を観察してスケッチしてみよう!」詳しく見る
学芸員による展示解説詳しく見る
 
夜間会館日
7月25日(土)~8月15日(土)の金曜・土曜は19:00まで開館(展示室への入室は18:30まで)
主催
石川県立歴史博物館
特別協力
北國新聞社
協力
能登地域トキ放鳥受入推進協議会、石川県ふれあい昆虫館
後援
NHK金沢放送局、金沢市教育委員会
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