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令和4年度アイヌ工芸品展 石川県立歴史博物館秋季特別展
「アトゥイ-海と奏でるアイヌ文化」

アイヌ民族をとりまく壮大なアトゥイの世界海にまつわる豊富な民具資料からアイヌ文化をみつめる本県初の展覧会


趣 旨

「アトゥイ」はアイヌ語で「海」を意味します。アイヌ民族は、その主な居住地である北海道・樺太からふと(サハリン)・千島ちしま列島を広大な海に囲まれ、海獣のほか魚類・海藻類など豊かな海の恵みにあずかってきました。危険を伴う海での生業にあたっては神々への祈りを欠かさず、大切に扱われた祭具や道具類が現在まで伝えられています。

また、アイヌ民族にとって海は外の世界とつながる道でもあり、大陸や本州との交流をもとに豊かな文化を発展させてきました。和人が「北前船交易」と呼ぶ江戸後期から明治にかけての本州と北海道との商品流通は、アイヌ民族の資源や労働力を組み込んで成立しました。北海道と北陸でやり取りされた海産物や工芸品の数々は、海を介した接触と交渉の歴史を伝えてくれます。

本展では、豊富な民具資料を主軸にアイヌ民族と海の密接な関わりについて紹介します。

*日本の民族的マジョリティ

秋季特別展チラシ(PDF:1.5MB) 出品目録(リスト)(PDF:492KB)


一部資料の名称について

器物のアイヌ語名称には方言による違いがあり、同じ地域のなかでも同形のものを異なる名称で呼ぶことがあります。今回展示する資料には、製作地・使用地・収集地といった情報が不足したものが含まれるため、北海道と樺太での代表的な名称を併記しています。樺太方言による名称には、下線を付してあります。
例 イクパスイ/イクニ
  (北海道方言) (樺太方言)


展示構成と主な展示品

I 海に生きる

海辺に暮らすアイヌ民族は、大海原に舟を漕ぎ出し、海の恵みを得てきました。その対象は、小さな魚・貝・海藻から、クジラ・トド・アザラシ・オットセイなどの海獣、メカジキ・マンボウなどの大型魚にまでおよびます。「海に生きる」ではアイヌ民族の海での生業活動について紹介します。


銛先 キテ/キテ
北海道博物館蔵

海獣や大型魚の捕獲に使った銛先。鯨骨やメカジキの鼻先、シカ角、固い木などに金属板を挟んで固定する。

板綴じ船(模型)
国立アイヌ民族博物館蔵

アイヌ民族が海での漁撈に使った船の模型。丸木舟の舷側に板を綴じ合わせ、隙間には浸水を防ぐためにコケなどを詰めた。



II 海の恵み

アイヌ民族は、海からの恵みを余すことなく生活の様々な場面で利用してきました。その用途は、食料はもちろん、生活道具から子供のおもちゃの素材まで多岐にわたります。「海の恵み」ではアイヌ民族の魚類、貝類、海獣などの利用について紐解きます。

衣服(獣皮)
早稲田大学 會津八一記念博物館蔵

アザラシの毛皮で仕立てたコートで、樺太アイヌに多く見られる衣服。色味の違う毛皮を縫い合わせてモザイク状の文様を作り出し、布や刺繍、ビーズで装飾する。

小刀
市立函館博物館蔵

海獣皮製の下げ紐をもつ小刀。小刀はアイヌ民族にとって身近な利器で、海での活動においても獲物の解体、綱の切断などに使用される。現在は小刀類を総称してマキリと呼ぶことが多い。

貝下駄 セイピラッカ
国立アイヌ民族博物館蔵

ウバガイ(ホッキガイ)で作る遊具。両足の親指と人差し指の間に縄を挟んで貝殻に乗り、歩いて遊ぶ。



III 海に祈る

アイヌ民族の世界観では、この世の全てのものに魂が宿っており、それらの恵みによって生かされることに感謝の祈りをささげます。その精神文化は、暮らしの基盤となる周囲の自然と密接な関係にあります。「海に祈る」ではアイヌ民族の海の信仰に焦点を当てます。

人間を守護するカムイ(アホウドリ)
北海道博物館蔵

動物神の霊送りをせずに人のもとに留まり、助力をするよう祈願する神をシラッキカムイと呼び、頭骨をイナウ(木材の表面を薄くリボン状に削って花弁や房状にしたもの・木幣)の削りかけで飾る。アホウドリはその臭気で悪神を祓うという。

サメの歯がついた儀礼用冠
市立函館博物館蔵

儀礼の際などに男性が正装としてかぶる冠。日高地方で収集されたもので、ブドウヅルで編んだ本体に、アオザメの上顎と下顎を二段に重ねて結ぶ。

イクパスイ/イクニ 重要有形民俗文化財
市立函館博物館蔵

木製で海獣や舟を彫刻する。儀礼の際に神酒を入れた椀とあわせて用い、先端に神酒をつけて振りまくことで神霊や祖霊に献酒する。



IV 海でつながる

海は、外の世界とつながる道でもあり、そこには相互の接触と交渉の歴史があります。いわゆる「北前船交易」の背景にも、アイヌ民族の資源や労働がありました。「海でつながる」では、おもに北陸地方とアイヌ民族の関わりについて紹介します。

杯・天目台
苫小牧市美術博物館蔵

アイヌの祭祀具で、天目台に漆椀をのせて使用する。漆器は和人との交易などで入手し、そこには輪島塗や山中塗など県内産の漆器も含まれた。

衣服(草皮繊維)
本館蔵

能登黒島村の北前船船頭の家に伝わったアイヌの衣服。イラクサ科植物の繊維からできており、樺太(サハリン)のアイヌ民族の主要な衣服で、「テタラペ」と呼ばれる。

熊送り図額
新潟県柏崎市石地 御島石部神社蔵

和人の手による「アイヌ絵」であり、熊の霊を送る儀礼・イオマンテを描いたもの。絵師は函館を拠点に活動した木戸竹石、奉納者は石地村から小樽に出て富を築いた実業家の高橋喜蔵。

天社丸イナウ奉納額 輪島市指定文化財
輪島市門前町黒島町 若宮八幡神社蔵

加賀・能登には、アイヌのイナウ(木幣)を2本一具にして扁額に収め、海上安全を祈願した奉納額が伝わる。能登黒島村の廻船問屋角海家の新造船天社丸の安全を祈り奉納されたもの。




会 期
2022年9月23日(金)~2022年11月13日(日)  
*9月23日(金・祝)は開幕式のため一般入場は10:00から
時 間
9:00~17:00(展示室への入室は16:30まで)  
休館日
10月19日(水)は展示替えのため休室 
会 場
特別展示室 企画展示室 
観覧料
一般1,000(800)円 大学生・専門学校生800(640)円 高校生以下無料
  • *( )内は20名以上の団体料金 65歳以上の方は団体料金
  • *障害者手帳または「ミライロID」ご提示の方、および付添1名は無料
  • *常設展もあわせてご覧いただけます
  • *加賀本多博物館は別途観覧料が必要です
  • *電子チケットもご利用いただけます

電子チケットのご案内

販売期間 9月1日(木)~11月13日(日)15時30分まで
料金 一般1,000円
   大学生・専門学校生800円

ご注意

  • *65歳以上の方をはじめとする各種割引料金の適用を受けられる方は、電子チケットをご利用いただけません。ご来館当日窓口にてご購入ください。
  • *日時指定券ではございませんので、入館枠の確保はできません。

 
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主 催
石川県立歴史博物館・小樽市総合博物館・公益財団法人アイヌ民族文化財団
後 援
国土交通省・北海道教育委員会・公益社団法人北海道アイヌ協会・北國新聞社
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